庭をつくるにあたって、施主様に事前に考えてほしいことを特集してみました。

広いお庭を確保することがなかなか難しい昨今の住宅事情ではありますが、ちょっとしたスペースはどんなお宅にも必ずあるはずです。

どんな庭にしたいかご要望がはっきりとしている方もそうでない方も、ぜひご自分の庭というものを想像しながらご覧ください。

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自由度の高さ

ガーデン(庭)は、その自由度がエクステリア(外構)よりも高いのが特徴です。

エクステリアには、ポストや表札、駐車場や駐輪場など、生活する上でどうしても外せないものがありますが、一般的なガーデンにはそれがありません。

ポストが無いと日常生活に支障をきたしますが、庭が無くてもまず生活に困ることはありません。

そこをあえて庭として造り込もうというのですから、庭は施主様の精神的な豊かさの象徴であるとも言えるのではないかと思います。

「庭なんて手がかかって大変だから要らないよ」とお考えの皆様にも、ぜひ一度考えて欲しいんです。

施主様のライフスタイルに合った庭というものが、必ずあるはずです。

庭の自由度は、それほど懐の広いものだと思います。

庭の種類

庭というと、ほとんど全ての皆様がイメージされるのは、いわゆる「主庭」というものです。

「主庭」とは南に面したメインの庭のことで、広大で立派なものも多く、皆様がイメージされる庭はだいたいこの「主庭」です。

ところが庭には他にもいくつか種類があって、

「前庭」「中庭」「坪庭」「裏庭」の他、

最近の「屋上庭園」「コンテナガーデン」「壁面緑化」なども庭の一種です。

少し主旨は異なりますが、「箱庭(ミニチュアガーデン)」なんていうものもあります。

極端な話、庭はどこにでも作れてしまうわけです。

イメージから「主庭」を唯一の「庭」と捉え、早々に諦めてしまうのではなく、その場所に適した「庭」というものがちゃんとあるということを知っていただきたいと思います。

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庭でしたいこと

さて本題に入ります。

実際に庭をつくる上で施主様にまず考えて欲しことが、「庭で何をしたいか」ということです。

これによって、事項「庭に欲しいもの・必要なもの」もある程度決まってきますので、まず「何をしたいか」を考えることが理想の庭をつくる上では何よりも重要です。

と言っても、今まで集合住宅に暮らしていて戸建ての経験が無いという方もたくさんいらっしゃいます。

「庭で何かをするイメージが湧かない」というお話も良く聞きますので、ここにざっとあげてみます。

景色を眺める(室内にて)

木々や石などの自然な風景、四季の移ろいを室内から眺めて過ごしたい。

夜景を眺める(室内にて)

ライトアップされた庭を室内から眺めて楽しみたい。

景色を眺める(屋外にて)

室内から出て、屋外で庭を眺めて過ごしたい。

水の音を聞く

流れる水・落ちる水の音を聞いて過ごしたい。

散策する

眺めるだけでなく、庭の中を歩いて散策し、自然を感じたい。

休息する

庭にリラックスチェアやハンモックを出してのんびりしてみたい。

果樹を育てる

実のなる樹木を育て、収穫したい。

ハーブを育てる

料理で使うハーブを育て、収穫したい。

野菜を育てる

ちょっとした野菜を自分で育てて収穫したい。

草花を育てる

可愛い草花を育ててみたい。

小動物を育てる

ペットを庭で育てたり、遊ばせたりしたい。

子どもを遊ばせる

子どもを庭で遊ばせたり、一緒に遊んだりしたい。夏にはプールを出したい。

スポーツを楽しむ

庭でサッカーなどのスポーツを楽しみたい。

飲食を楽しむ

庭でお茶をしたり、ご飯を食べたり、お酒を楽しんだりしてみたい。

読書や音楽などの趣味を楽しむ

庭で読書や音楽など、趣味を楽しみたい。

ざっとあげてみました。

では、実際にこれらを行うために、庭に必要なものはなんでしょうか?

庭に欲しいもの・必要なもの

・季節感のある樹木

・経年変化を楽しめる自然石

・ライトアップするための照明器具

・眺めたり過ごしたりするテラス

・室内と同じ高さのウッドデッキ

・地面と同じ高さのグランドデッキ

・屋外用のイスやテーブル

・池や流れなどの水場

・園路

・果樹

・花壇スペース

・菜園スペース

・水栓

・混合水栓

・ガーデンシンク

・芝生スペース

・飛び出し防止柵

・サンシェードやパラソルなどの日除け

このように、やりたいことを考えると、欲しいもの・必要なものが見えてきます。

また直接は必要ないにしても、それらをするための道具や資材等を収納する

・物置

があると便利なことも多いです。

目隠しと背景

そして全てに共通することですが、

庭という空間の特性からもプライベート性を高めるための、

・外からの目隠し

は必須なものの一つです。

庭で過ごす上でも、もしくは室内への目線を考えても、「外からの目隠し」は外すことが出来ません。

同時に、庭の質をより高めるための、

・背景

があった方が良いということも付け加えておきます。

これらは一つの構造物で、その機能を兼用させることができます。

庭における最も重要な構造物と言えるでしょう。

デザイン的にも、庭との調和・建物との調和等、よく考えなければなりません。

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ガーデンを考えるにあたって

ここまで、庭でしたいこと~必要なものまで言及してきました。

敷地や建物によってはしたくてもできないことがあるかもしれませんし、住宅密集地では周辺環境や近隣にも気を配らなければなりません。

施主様としては予算のことも当然気がかりだと思いますし、新築工事の場合はガーデン以前にエクステリアにも少なからずお金がかかります。

庭といっても、その条件は様々です。

まずはやってみたいことを全部出してみて、その中から優先順位を決めていくことをおすすめします。

優先順位を決めるにあたっては、ぜひプロの意見やアイデアも参考にしてください。

きっと施主様だけでは分かり得なかったこと、見えなかった部分が見えてくるはずです。

現実的には皆様、当然ですが、

①建物

②エクステリア

③ガーデン

の順で考えられます。

もとより庭とは生活の中でも優先順位が低いものですが、その中で何か一つでも施主様のやりたいことやこだわりをその中に取り入れていただきたいと切に願っています。

「予算が無いけど、家に木が一本も無いのは何か寂しいな~」と感じるその感覚こそ、豊かな自然に育まれた私達のルーツだと思います。

そんな時はシンボルツリーを軒先に1本植えるだけでも十分です。

施主様のライフスタイルに調和した庭というものがきっとあるはずです。

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造園は、住宅建築の中でほぼ唯一植物を扱う工種です。

無機質な建築構造物は完成翌日から衰えていく一方ですが、庭は完成翌日から樹木や草花の生長・自然素材の経年変化に合わせて、どんどんとその完成度を増していきます。

伝統的・文化的な側面を併せ持ちながら、独自に進化してきた日本の庭。

作り手としては、その精神的な一部分だけでも受け継いでいきたいと思っています。